FERNANDES APG レストア

フェルナンデスのAPGをボディーとネックとペグとコントロールだけの(セットネック)ほぼ抜け殻状態で入手しました。

フェルナンデスAPGかなり時間をかけて調べましたが、機種はAPGでも品番は不明。
基本的にはAPG100なのですが、APG100は基本的にトップのメイプルはプレーン材です。そしてトグルスイッチの位置はこのギターではトーンポットと入れ替わっています(穴の径が変更されていないのでこのギターではこれがデフォルト)。
しかし「たまたま杢入りでした」というレベルではなく、派手ではありませんがしっかりと綺麗なピンスト系の虎杢が出た美しいトップです。どこかのショップオーダーかフェア出品用の個体かもしれません。何れにせよAPG100よりはワンランク上位機種であることは間違いないでしょう(でも定価が解らないと価格が決めにくい・・・)。

APGトップ解りにくいかもしれませんが、トップの年輪が全てピックアップキャビティー壁面に繋がっていることから突き板貼りではなく厚みのしっかりある杢入りトップであることが解ります。
ただ、ピックアップキャビティーは見るからに深すぎるので必要最低限まで埋めます。

APGコントロール間違いなくUSA版のドラゴンフライのジャパンエディションに共通するサスティナー基盤搭載を前提とした広大なキャビティーです。
日本で販売されているモデルも共通の仕様かは私は知りませんので、輸出モデルの廃盤品である可能性もあります(現行輸出モデルはサスティナーが搭載されています)。
この広大なキャビティーを不要な部分だけでも完全に埋めるのはかなり大変な作業になり、販売価格を押し上げてしまいますので、今回は埋め方にちょっと変わったアプローチを用います(後述します)。

APGブリッヂ周辺一番気に入らない箇所です。
ブリッヂはスタッド直埋めタイプではなくアンカータイプですので、一端埋めてスタッドを直埋めにし、ABM社製のブラス削りだしのABRタイプを搭載します。

APGブリッヂ部加工1早速埋めました。トップ同様柾目のメイプルのプラグを製作して埋めてあります。

APGブリッヂ部加工2成型しました。

APGボディーステインで色付けしてスタッド下穴を開口しました。
ハイトアジャスタが覆うのでコスト削減のためタッチアップではなく色付けのみです。

APGキャビティー加工これがコントロールキャビティーを素直に埋められない理由です。
トップのアーチに合わせて斜めに掘られているんですね。この状態で内部の塗装を落とすのは至難の業で、コストが跳ね上がります。
また、ボディーがレスポールと同等の厚みがありますし、塗装も結構分厚いので鳴りが若干硬めになることから、ちょっと負け要素が欲しいところなんですね。かと言ってこのままだとブリッヂ周辺の木部が少なくなるのでサウンドとしては薄くなります。で、とりあえずバック面から垂直にルーターで壁面を落として埋め木の接着面を作ります。

APGキャビティー埋め木加工そこでこのように。
これはまだ接着前のフィッティング中のショットです(現在接着済み)。あえてトップと埋め木の間に空間を残すことにし、ボディーバックの中心部のマホガニーから響きを効率よく受け継ぐように繊維方向を約45度斜めに切り出した埋め木を製作しました(画像では手前からジャック方向に繊維が流れています)。

APGピックアップキャビティー埋め木加工コントロールキャビティー部では少々の負け要素を作ってありますので、弦のテンションに対する剛性を上げる為にピックアップキャビティーの埋め木は通常よりもきつい埋め木を作り圧入することで反応速度を上げています。何でもかんでもタイトにすれば良いってもんではありません。

テイルピースはAPGに採用されているタイプはゴトーの510FAではなく、レスポールタイプのGE101A(アルミ製)に交換。
ブリッヂがABRですからね、合わせました。また、510FAにはニッケルメッキがラインナップされていないんですよね。私はクロムメッキのブリッヂって基本的にあまり好きじゃないんです(笑)。

後はピックアップを何にしようかというところでしたが、以前レストアしたフレッシャーのRRVから外したピックアップを調べてみると、抵抗値が8kΩ程度で、マグネットもさほど強磁力ではなく、見た感じ間違いなくセラミックではない・・・ということはアルニコなのですが番手までは解りません。
ということで、ちょっと思うところがあり試しに搭載してみることにしました。で、これは正解でしたね(笑)。
そもそも80年代後期~90年代初頭の「~ふう」とか「~を目指したオリジナル!」といったお題目の無いメーカーOEMの汎用ピックアップ・・・つまりこの場合は当時のゴトーの汎用ピックアップになるのですが、こういうのは「クセが無いことが売り」なんですね。
色んなメーカーの購入しやすい価格帯のギターに搭載されるわけですから最大公約数的なピックアップであることが多いのです。しかも聴覚上のパワー感があるものが多い。思惑通りならこのギターにはぴったりだろうなと思ったわけです。

さて、リペアやオーダー品の作業等でバタバタしながらのレストア作業でしたので、いつものように組み込み作業の画像は撮り忘れました(笑)。
で、このほぼ抜け殻で売りに出されてしまったこのギターの素性が少々見えてきました。

APG裏これ、ボディー材のセンタージョイントにスケールを当てたところなのですが、つまりこれだけズレています。
トップ材もバックのマホガニーと同様にセンタージョイントされていますので同じようにズレています。
しかし、ネックやパーツはちゃんとセンターに付いています。
どういうことかと申しますと、ボディー材をセンター2Pのマホバック/メイプルトップで作ってあり、それをNCルーターにセットしたときに材のセットがいい加減でセンターがズレてしまった。
NCルーターは設計図どおりに加工するだけですから、材のどこがセンターだなんて確認しながら作業をしてくれません。設計図どおりですからジョイントが斜めになってしまっただけで全ての加工はきちんと定位置。
で、そのままネックセットやサンディング、塗装を経て組み込みをしている工員さんが私と同じように気づくんですね(笑)、「おや?材のセンターがズレてるぞ!」と。
もうこうなったら売り物のギターにはなりませんから、コストの高いゴトーパーツだけ外してラインからはじかれた。それを棚卸しか何かの時に発見し、営業マンが持ち出してどこかの楽器店に「こんなものあるけど要りませんか?」ってな具合に世に出てきた・・・まあよくある話です。
一応、見るからにAPGシリーズのフラッグシップかそれ以上のモデルでB級品でも完成品として世に出すわけには行かない。けど原価だけは回収する。まあそんなところでしょう。見た目だけの問題ですけどね。
ですからギター本体は良く見れば若干傷がある程度で、リアピックアップキャビティーから後方に向けてほんの少し塗装の割れがある程度(よく見れば解る程度に補修済み。)でほぼ新品に近い状態である理由は、工場や楽器店での保管時にちょっと付いちゃったと。
フレットも全く減ってい無いのは当然ですから今回はリフレットも行っていません。やぼったい樹脂性ナットを象牙ナットに交換しました。

APGなかなか良い面構えですね。私はPRSよりこちらのほうが好きです。
実は私、二十歳の頃にこのAPGの前進であるFREというモデル(形状は全く同じ)のフラットトップでディープジョイントのデタッチャブルタイプでFRT4が搭載されたFRE85というギターを持ってました。その時はPRSなんてどこに行ってもあるようなギターではなかったし、今ほどメジャーでもありませんでした。つまり私はPRSなんて存在くらいは知ってた程度でこのギターのルックスに惚れて購入したんですね。
レストア作業をしながら当時のことを思い出したりしていましたが、フェルナンデスって良いデザインのギターを沢山作ってますね。でもなんかパッとしないというか・・・(笑)。きっとヘッド形状が微妙なんでしょうね、なんかそんな気がします。

さて、今回の個体はちょっと厚めのポリエステル塗装であるというデメリットがありました。
やはり生音ではエステルの硬い塗膜の特徴であるハイ上がりな特性ですが、レスポールと同様の分厚いボディーのおかげで中域も低域もしっかり出てきています。
さらにピックアップキャビティーの埋め戻しやちょっとひねりを加えたコントロールの埋め木も予想通りに機能してハイ上がりなままダイナミックに鳴ってくれています。
勿論、この分厚く硬い塗装を剥がしてリフィニッシュをしたかったのですが、そうなるとこのギターの定価以上の価格になってしまうのは必至ですから、「リフィニッシュをせずにどこまで限界を超えられるか」をテーマに取り組みました。
まあ間違いなく今楽器屋に並んでいるどのAPGよりも上質な鳴りの1本でしょう!

ピックアップは特にリアは美味しいですね。歪ませると分厚くローエンドまでしっかり拾ってくれます。クリーントーンにしてもエステル塗装のギターにありがちな薄っぺらさはありません。ヴィンテージっぽさではなくモダーンな印象ですね。
フロントは・・・うーん、こういうトーンもありですが、ハイ上がりなんだけどローが出すぎな感じが若干こもった印象と言えなくも無い。気になる人はフロントだけもう少しハイ上がりに拾うピックアップに交換すると良いでしょう。歪ませるとさほど気にならないと思います。

前回予告編で記事を書いたときには売価を¥70,000程度と公表しましたが、ピックアップをリユースしたので¥60,000(税抜き/ケース別)での販売とします。

PRS レストア開始!!

PRSギターの一ファンとして、今までギター製作やレストアにおいて独自に培ってきたノウハウを惜しみなく継ぎ込み、PRSユーザーが手放すことを考えない、「さあギターを弾こう」と思い立った時にいつも真っ先に手にしているような、いつまでも弾いていたくなるような、そういうギターに仕上げようとPRSのレストアに踏み出すことにしました。