板屋楓ネック

板屋楓ネック

ストラトタイプのギターにおいて、私がどうしても納得できなかった部分が低域の締りの無さです。
特に6弦のアタック直後のコンプレッションがかかったような減衰の仕方は、良い意味では主張しすぎず軽快でまとまりのあるサウンド指向としての要素であり、それがストラトの汎用性の高さにも繋がっているわけです。
しかし、同じフェンダー系で構造も類似しているテレキャスターと比較すると、どうしても低域の迫力の無さを感じてしまう。
これはストラトキャスター独自の形状や構造によるところで、6弦側ボディーにカッタウェイがあるために、ネックからの振動の低域側の受け皿となるボディーの容積が少ないこと、そして更にトレモロ搭載のためにスプリングキャビティーがボディー中央部に大きく開口されていることがその大きな要素となっています。
しかしこの両者があってこそのストラトタイプですので(スプリングキャビティーについては後述します)、ネックによってなんとか少しでも低域を引き締めたいと考えていました。

そこでまずたどり着いたのがローズネックです。一般的に指板材として用いられるローズウッドをネック材として使ってみました。
これは予想をはるかに上回る結果で、ハードメイプルのネックと同等のアタックレスポンスを持ちながら、プレーン弦はワウンド弦との差をさほど感じないくらいの存在感があり、低域ではしっかり引き締まりつつもハードメイプルよりはるかに倍音成分が豊富で、図太く艶やかなサウンドを得るに至りました。
あくまでも私の好みではこれで最良の結果を得られたのですが、一つ疑問が残ります。「これはストラトの音なのか?」と…

確かに採用したインドローズのネックは低域の締りが良く、図太く艶やかで申し分ないのですが、これでは主張しすぎてストラトの魅力である汎用性の高さは失ってしまいます。そしてそもそも見た目が茶色いネックではストラトらしくもありません。
たしかにローズネックのその魅力は捨てるべきものではありませんが、それはまた別の方向性です。私が望むのはストラトの範疇でもう一声私の期待に応えてくれる何か…です。

そこで出会ったのが日本の楓、その中でも板屋楓です。
もちろんストラトやテレキャスターに使われるハードメイプルも楓です。つまり地球規模での産地違いの樹木です。
ネックに使われるメイプルは基本的には北米産の砂糖楓(メイプルシロップが採れる木です)と呼ばれるもので、一般的にハードメイプルと呼称されます。ギターのトップ材によく用いられる派手なキルト杢の出たメイプルはソフトメイプルで、同じカエデ科の中でも比較的軟らかい樹種の総称で、ソフトメイプル類は基本的にはネックに使用することは出来ません。板屋楓はハードメイプル類に属します。

最初は「日本の楓ってどうなんだろ?」程度の興味本位でしたが、これが私の思惑に見事に一致したのです。
単純にハードメイプルと比較すると、高域も低域も少し狭い。つまりレンジはハードメイプルのほうが若干広いのですが、板屋楓はレンジが少し狭いぶん密度が高いという印象です。
これが低域の締りを産み、この密度感が中域~高域まで連続して存在するので薄っぺらさは皆無、しかし同じカエデ科ですので基本的にはハードメイプルと同一線上に存在するサウンドの中でこれらが達成できるのです。
※ストラトの低域への不満からたどり着いた材料ですが、勿論テレキャスターや他のタイプのギターに使用することが出来ます。
特にテレキャスターへの使用は、少しレンジが狭くなることを利用してまとまりのあるサウンドを目指す場合に有効です。

板屋楓 製作例

PRS レストア開始!!

PRSギターの一ファンとして、今までギター製作やレストアにおいて独自に培ってきたノウハウを惜しみなく継ぎ込み、PRSユーザーが手放すことを考えない、「さあギターを弾こう」と思い立った時にいつも真っ先に手にしているような、いつまでも弾いていたくなるような、そういうギターに仕上げようとPRSのレストアに踏み出すことにしました。